画像診断が進歩した一方で、脳波検査を施行できる医療機関、脳波を判読できる医師がいちじるしく減っています。しかし脳波でしか知りえない疾患は少なくありません。代表的なものはてんかんであり、脳波検査が行われないまま見過ごされている場合が少なくありません。また意識障害、睡眠覚醒障害、脳の発達などにも脳波検査が有用です。
脳波検査が行われなくなった理由として脳波判読には熟練が必要なこともあります。脳波がとられていても正しく判読されず誤った治療が行われていることもしばしばあります。脳波判読はいまだにコンピューターによる自動診断が成功していない数少ない検査の一つです。将棋や囲碁でもプロがコンピューター に勝てなくなっている時代に不思議なことかもしれません。しかしてんかんに特徴的なスパイクという波形の判定がコンピューターにはできません。
私は専門領域の一つとして脳波学を選び、小児から成人まで様々な疾患の脳波判読に取り組んできました。脳波判読には脳波の所見のみならず様々な情報を統合して判断する能力が必要とされます。経験を生かして的確な脳波診断を行なっていきたいと思います。